意見提出:第5次エネルギー基本計画策定に向けて
Post date: Jun 18, 2018 1:12:24 AM
北海道再生可能エネルギー振興機構は、第5次エネルギー基本計画策定に向けた
意見の募集(パブリックコメント)に対して、地域活性化の視点から以下の意見を提出しました。
◆意見の本文(PDF)は【こちらをクリック】
「地域主導の再生可能エネルギーを優遇することで地球温暖化防止と地域活性化を」
2018年6月15日
一般社団法人北海道再生可能エネルギー振興機構
一般社団法人北海道再生可能エネルギー振興機構(以下、当機構)は北海道内への再生可能エネルギー(以下、再エネ)普及の支援を目的としており、道内全179自治体のうち68の自治体会員と、合わせて47の企業と個人会員が参加している会員組織です。
1.再エネ導入に高い目標設定を
第5次エネルギー基本計画(案)では、再エネについて「主力電源化」する方針が初めて打ち出されましたが、2030年度の電源構成における割合を22~24%とする目標を据え置いており、説得力に欠けています。前回の2014年時点から温暖化対策の国際枠組みであるパリ協定の発効、再エネの世界的な予想を上回る規模での導入とコストの低下といった、この4年間の経過が反映されておらず、現在の15%に比べ、低すぎる目標となっています。パリ協定の発効で、世界は脱炭素社会の実現へ大きくかじを切っており、欧米各国は、2030年の再生エネの割合を30~50%に引き上げる目標を掲げ、企業においても再エネ100%に向けた取り組みが世界的に加速し、世界的な大企業がすでに再エネ100%を達成することを目標にし始めています。グローバルなサプライチェーンの中でも再エネの利用が求められており、日本の企業も無視が出来ない状況です。日本においても電源構成を見直し、再エネの目標を高く掲げる必要があります。
2.北海道自治体の多くで再エネの活用を求める声
再エネは地球温暖化対策、海外からの化石燃料の輸入依存の低減、エネルギー自給率の向上、原子力発電のリスクの低下にとって有用であり、さらにそれぞれの地域の資源を使った地域産業となることから、再エネを地域に普及させることを通じて、地域外へ流出していた雇用、資金、エネルギーの地域内循環を達成し、地域社会経済の活性化が期待できます。地方創生のためには、これまでの大規模集中型から地域主導・分散ネットワーク型への転換は避けて通れません。
当機構が2017年12月から2018年1月にかけて実施した、北海道の全自治体に対するアンケート調査(143自治体回答、回答率79.9%)によれば、再エネを活用したエネルギーの地産地消、雇用の増加など、再エネに対する期待が高まっており、北海道の多くの自治体が地域資源を有効に活用した再エネの導入によって地域の活性化を期待していることがわかりました。しかし、国の政策での必要な対応としては、「一定の成果が出るまで、適宜修正を施しつつ固定価格買取制度(FIT)を維持(買取価格の維持)」「地域主導で進める再生可能エネルギー事業の系統接続を優先する仕組みづくり」「地域に貢献する事業は買取価格を別枠で上乗せする制度づくり」「送電網の運用方法及び空き容量の算定方法の見直し」との回答が多くあり、課題として、資金調達への支援や系統への接続の問題が改めて浮き彫りとなりました。
【第2回北海道における再生可能エネルギー導入に関する意向調査についてはこちらをクリック】
3.再エネの優先的な系統への接続を
再エネの利用を推進する為には、送配電事業者への再エネの買取り義務、あるいは優先接続と優先的な給配電の方針の明記をし、必要な系統増強や柔軟な系統利活用、需要側管理、蓄電池の利用などの環境整備が必要です。
系統混雑時における出力制御については、出力制御を減らす条件整備が必要であり、出力制御の予見性の提示が必要です。出力制御により生じた損失の補償を求めることができない再エネ事業者、とくに資金力の弱い地域の中小事業者や市民が再エネを導入する際に、金融機関からの融資を受けられない可能性が高く、事業者の投資リスクを減らす事が重要となります。
4.地域と協働するための制度改革を
真に地域に根差した再エネの取組みとする為には、再エネの利用計画の議論や事業、環境影響評価に地域の住民や自治体が参画し、再エネの生み出す便益が地域に還元されるような形で進めることができるよう、地域での連携が欠かせません。地域の声が反映されるような制度改革を進めるべきです。
5.再エネを活用した第一次産業の基盤強化 ~系統接続への実効的施策を~
農林水産業などの第一次産業においても再エネを活用した地方創生の取組みが重要です。農業生産と発電事業を一体で取組むソーラーシェアリングや農業用水を活用した小水力発電、林業や畜産業におけるバイオマスエネルギーなどの取組みへの関心が高まっています。本基本計画案第2章の第2節において簡単に触れられておりますが、再エネのポテンシャルが圧倒的に大きい北海道においては、基幹産業である第一産業における再エネの取組みが経営基盤の整備、強化と同時に社会の受容性の観点からも取組みの意義は大きいといえます。とりわけ酪農・畜産業において、家畜ふん尿は従来よりコストをかけて処理している資源ですが、バイオガスプラントを用いる事でエネルギーとしての利用の他、家畜ふん尿の臭気低減や自然環境保全、有機肥料としての活用など多面的な効果があります。そのようなバイオガス事業の活用については、政策による環境整備が重要となってくる事から、バイオガス事業の効果と推進施策について明記するべきと考えます。具体的には、太陽光や風力発電と同様、バイオガス等においても系統の空き容量不足から、接続不可の地域事業が多数顕在化しており、事業化が困難な事態に直面しています。例えば高圧送電線の張替えや変電所設備の交換などといった電力工事負担金への補助金制度、若しくは特定負担割合の最小化など、日本版コネクト&マネージを踏まえた追加的かつ実効性のある推進施策を実施すべきと考えます。
6.再エネによる熱の利用推進を
日本では、熱利用に関する再エネの導入が遅れており、熱の効果的利用、熱電併給システムの導入拡大など、そのための目標設定やインフラ整備などを実施し、再エネによる熱利用についても推進するべきです。
今世紀後半には世界の温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする必要があるとしたパリ協定に沿い、かつ地方創生を進め、日本の経済・社会の活性化を図るためには、省エネをセットで進める再エネの活用が重要です。その為には、適切な施策と仕組み、政策的支援が重要となり、早期実現のためには、目標を高く掲げた政策の実施が必要です。
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
◇意見募集詳細:第5次エネルギー基本計画策定に向けた御意見の募集について
【こちらをクリック】(意見・情報受付期間:2018年5月19日~6月17日)
第5次エネルギー基本計画策定に向けた意見(北海道再生可能エネルギー振興機構)