2023.3.16 政策提案

『再生可能エネルギーで北海道の地域活性化を』

 一般社団法人北海道再生可能エネルギー振興機構は、今年4月の統一地方選挙において、北海道が直面する政策的諸課題を明らかにし、議論が活発化することを願い、政策課題のうちでも重要なエネルギー問題について提案いたします。

一般社団法人北海道再生可能エネルギー振興機構

2023.3.16 提案「再生可能エネルギーで北海道の地域活性化を」

[PDF版はこちらをクリック]


 現在、深刻化する気候変動に対応する為、2020年10月に政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。またロシアのウクライナ侵攻などによるエネルギー危機により、エネルギー安全保障の観点や価格の高騰など暮らしに密接に関わるエネルギーの問題は山積しています。再エネは地球温暖化対策、海外からの化石燃料の輸入依存の低減、エネルギーの安定供給、原子力発電のリスクの低下にとって有用であり、さらにそれぞれの地域の資源を使った地域産業となることから、再エネを地域に普及させることを通じて、地域外へ流出していた雇用・資金・エネルギーの地域内循環を達成し、地域社会経済の活性化が期待できます。2050年カーボンニュートラルに向けては省エネルギー(以下、省エネ)の推進に加え、再エネの導入促進には地域の理解と共生が必須であり、その為には地域を活性化させ、地域課題の解決となるような、地域と共存する再エネ導入への適切な施策と仕組みづくりが必要です。


1.地域活性化へつながる再エネ導入支援を

 北海道は2030年度の温室効果ガスの削減目標2013年度比48%削減に向けて、再エネの導入を急がなければなりません。一方、急激な再エネ拡大に伴う環境への影響等への懸念が高まっています。道は脱炭素化の意義とともに、こうした懸念に対して、科学的根拠に基づく情報を道民に提供することが必要です。また再エネ導入による意義を地域が理解するには、地域裨益型(再エネ収入が地域にとどまる)の再エネ事業が展開されるような政策支援が必要です(以下3 再エネ事業による受益者の増加 参照)。

 市町村は地方公共団体実行計画に、地域の再エネを活用した脱炭素化を促進する事業(地域脱炭素化促進事業)に係る促進区域を設定することを努力義務として求められていますが、それぞれエネルギー需給を考えたまちづくりのデザインをもち設定することが重要です。道は、各市町村が再エネで地域課題を解決し、脱炭素を実現する将来像が実現できるよう、地域の合意形成に向けて、自然環境及び再エネ導入に関する専門家の派遣等、積極的に関与することが重要です。

 

2.道内産業の基盤強化を再エネで

 再エネのポテンシャルが圧倒的に大きい北海道においては、基幹産業である第一次産業における再エネの取組みが経営基盤の整備、強化と同時に社会の受容性の観点からも取組みの意義は大きいといえます。酪農・畜産業において、家畜ふん尿を活用したバイオガス発電により、エネルギー経費の削減、売電による新たな収入が獲得できるとともに、家畜ふん尿の処理コストや労働力の削減を図る事ができます。加えて、臭気低減や自然環境保全、有機肥料としての活用など多面的な効果があります。そのような農業振興に資する再エネ事業の活用について、政策による環境整備が重要となってきます。さらに、北海道で期待される洋上風力発電においては、産業界としてライフタイム全体での国内調達比率を2040年までに60%とする(注1)としており、北海道としても戦略的な産業転換、人材確保・移行への具体策を急ぐ必要があります。北海道は今後、エネルギー移出地域へ発展していきます。食と合わせてエネルギーを基幹産業として推進すべきです。


3.再エネ事業による受益者の増加

 市民出資の活用など近隣住民等を対象とした再エネ設備に関する有利となる投資システムを創出することで、地域と連携した再エネ設備の構築を推進することができます。道内では実際に石狩市、浜頓別町にて市民出資が行われています。岩手県久慈市では市内の再エネ事業検討者へ向けたガイドライン(注2)を作成し、事業が地域に裨益するものとなるよう求めています。その実施すべき事項には、市内企業又は個人による出資の受け入れや建設業務等への市内事業所の参入支援を求めているなど、地域と協調した再エネ設備の導入を推進しています。その他、石狩市や遠軽町では民間事業者により再エネ発電による売電収入の一部から寄付が行われ、環境保全等へ活用されています。再エネの地域理解・共生を進める為には、こうした再エネ事業従事者・出資配当者・寄付基金の受益者など、再エネによる受益者を抜本的に増やすことが重要です。


 以上、私たちは、再エネ・省エネ拡大による地域活性化を、北海道に向けて提案します。今、すべての道民が、住民参加と透明性を基本とした社会で、私たちの暮らしに大変重要なエネルギー問題についての現状認識を共有し、徹底的に議論していくことが必要な機であると考えます。

 北海道は今後、人口減少が予想され、かつ1次産業をめぐる状況が厳しさを増していくなかで、北海道の再エネと省エネのポテンシャルを活かすことは、地域経済を活性化する有効な手段です。21世紀の展望を切り開くためのエネルギーは、道民の意志と行動の結集によって生み出すことができると確信し、この提案を提出いたします。

(注1)洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会発表「洋上風力産業ビジョン(第1次)」より

(注2)岩手県久慈市「地域にひ益する再生可能エネルギーの事業実施に関するガイドライン」

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

一般社団法人北海道再生可能エネルギー振興機構

2012年12月、「北海道において再生可能エネルギーの導入を拡大し、地球環境の保全とエネルギー自給率の向上、そして地域経済社会の発展に寄与する」ことを目的として設立。道内61市町村と、企業・個人合わせて31の会員からなる。地域主導による北海道の再生可能エネルギーを普及拡大する為の情報提供やイベントの開催を行っている。

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

230316 政策提案「再生可能エネルギーで北海道の地域活性化を」 北海道再生可能エネルギー振興機構.pdf

<問い合わせ先> 一般社団法人北海道再生可能エネルギー振興機構 担当:田原

         TEL/011-223-2062 E-mail/ info@reoh.org