アーカイブ‎ > ‎

再生可能エネルギーの導入拡大に向けた政策支援の成果と課題、今後について

再生可能エネルギーの導入拡大に向けた政策支援の成果と課題、今後について
日時:2013年5月30日(木)17時~19時半
会場:札幌コンベンションセンター 204会議室
主催:北海道再生可能エネルギー振興機構


講演1 再生可能エネルギー拡大に向けて日本が進む道
講師:植田 和弘氏
京都大学大学院経済学研究科長・教授、調達価格等算定委員会委員長

【再エネ促進の起爆剤=再エネ元年】
最初に再生可能エネルギー全般に関して少しお話をさせて頂きたいと思います。私は固定価格買取制度(FIT)という制度を導入するということは、日本の大きな決断だったと思っています。ご承知の通り、日本は再生可能エネルギーへの取組みはかなり早くから進めてきました。例えば、太陽光はよくドイツと比較されますが、日本で早い時期に一定の進展がありある時期は先行していたわけですが、紆余曲折の結果、日本は充分には進展せずドイツの後塵を拝することになりました。再生可能エネルギーについて考える場合、どうしても福島の原発事故を受け、原発に代わる電源になるのか、という議論がされやすいと思います。もちろん将来的に、再生可能エネルギーによる発電を基幹的電源にしたいということはありえますが、来年とか3年後に実現するというような簡単なことではありません。電力供給源という側面でだけでこの議論をしては、再生可能エネルギーの意義は過少評価になってしまいます。電力供給源とそれ以外の熱の側面、あるいは燃料にかかる部分などを全部取り組んでいかなければ問題は解決できないということ忘れてはいけないと思います。 


【FIT導入の意義と導入加速のインセンティブ】
FITが出てきた背景の一つは、気候変動防止のための手段ということです。温暖化防止の手段としては、環境税あるいは排出権取引制度についてよく聞かれますが、エネルギー自体を変えていくという側面も非常に大事で、その手段としてFITを導入するとことは大きな意味があると思っています。私の専門は環境経済学で、大学院生になって最初に研究してきたことは、ゴミ問題や有害廃棄物問題でした。そこでわかったことは、生産・消費という行為は必ず同時に廃棄物を出す、つまり廃棄できないと生産・消費は出来ないということです。私は、今後廃棄制約が世界的に益々強くなると思っています。温暖化問題も実際はそういう廃棄制約問題で、廃棄物であるCO2を捨てる権利を先進国がとるのか、発展途上国がとるのか、という議論を国際交渉でやっているようなものです。このような観点で言えば、廃棄物の出ない技術は決定的な意味を持つわけで、再エネ発電は、CO2も放射性廃棄物も出さない技術であり、人類史的に意味のある大事な技術ということだと思います。今後、日本で再エネの開発を進め、安く再エネ発電ができるまでに普及したならば、それは明らかに国際的にも大きな社会的貢献であり、人類史的意義を持っていると言ってよいくらい大きな意味を持っていると理解して頂きたいと思います。

もう一つはエネルギーシステムそのものの問題です。ご存知のように、今後はエネルギーシステムが分散ネットワーク型に移行するとう面があり、再エネはひとつひとつが小さいけれども、繋ぐ、貯める、組み合わせることで大きく増やせるという性質があります。蓄電池やICTなどの情報技術を結びつき地域や生活を根底から変える可能性を秘めています。まさしくグリーンイノベーションですが、再エネ単体では限界があり、スマートグリッドをはじめ情報通信制御技術との結合が決定的に重要であります。電気自動車をエネルギーの供給源にするといった他の技術とセットで進めることで大きな変化を起こせるのです。同時に、エネルギー施設と地域社会との関係が変わります。もともと原発とか火力の発電所は大きく、遠隔地に電気を運ぶための施設で交付金がなければ歓迎されない。風力でも騒音、低周波、バードストライク、景観破壊等の問題があり、立地は簡単ではありません。デンマークではFITを導入した以降、「農家が3軒集まると自分たちの発電所を作ろう」という話もあり、自分たちの出資した発電所という意識で、売電の利益も騒音という廃棄物も自分たちに跳ね返るため、それらを工夫して解決しようとするようになります。従来日本が行ってきた補助金という方式では施設整備のインセンティブにはなっても、メンテナンスをしっかりやって運用益を最大化しようというインセンティブは働かなったと思います。

再エネ資源は魚とか水とか農地とかとよく似ていますが、それらが豊富な地域は地域資源をうまく活用しようという動機が働きやすいと考えられ、地域と親和的と言えます。再エネはもともと親和的な素質を持っているわけですから、あとはうまく使えるかどうかです。つまり、エネルギー資源と地域社会の関係をうまくつくれるかどうかというところが大事です。FITの導入によって、今まで価値がなかった風や水が宝物になったと言えるかもしれません。その宝物を地域がうまく活かすことができるか否かが問われています。


【FITと価格設定】
再生可能エネルギーは、地域全体で是非考えて欲しいと思います。そうすることで地域社会も変わり、地域経済も活性化していくと思います。買取制度が始まったことは、再エネを普及し、地域社会とその経済を活性化するための制度的基盤が整備されたということだと思います。今までは再エネ事業をしたくても経済性がないので動けない面があったと思います。エネルギー政策上、明確に再エネ発電を促進することとなり、FITの仕組みを入れることで投資と収益が計算でき、判断できるようになったわけです。効率的発電を行う場合にかかるコストに適正利潤、それにプラスαという価格設定で、全ての再エネについて同様に扱いました。更に、最初の3年間は法付則7条にあるように、「発電事業者の利潤に特別に配慮する」ことになりました。念のために言いますが、高い価格がついているとか随分私もお叱りを受けましたが、法律に先ほど申し上げたようなことがきちんと書いてあるわけで、これは初動者に対する配慮であり、再生可能エネルギーの持っているいろんな意味や多面的意義があるという理解のもとで、急速に再エネを増やしたいということだと思います。
しかしながら、FITに申請してきた事案には正確なデータを提出してもらうので、それに基づいて買取価格を毎年変えていくということです。制度自体が進化していくので、未来永劫ではないということです。もともとFITという制度は無くなることを期待して作っている制度であり、再エネ発電がマーケットで競争力を持てば必要ない制度で、競争力を持たせるために作られた制度です。


【FITの重要点と課題】
それから、FITをうまく動かすには、地域共生の視点と事業性の視点が重要です。そこでは、地域の活動である経済、産業、雇用や地域社会への効果みたいなものを考えて頂く必要があります。事業性として採算がとれるかどうかと、地域でどのような効果があるかは同じことではありません。それは両方がバランスよく成り立つことが地域の立場からは必要だと言えると思います。それから地域で取り組む場合は、エネルギー施設と地域社会の新しい関係を作り出す可能性があるということですから、地域での協議が必要であり、大変重要です。
事業性では、資金調達の問題が大きく、地域の金融機関には頑張ってもらう必要があります。特に、北海道で再エネが本格的に普及するには、地域金融機関に再エネ担当が必要になります。再生エネの事業資金をどうファイナンスするか、再エネ事業分野に精通した担当者を育てて持ち込まれた案件を判断する必要があります。市民ファンドも含めた金融ファイナンス問題は大事な問題です。
FITの運用と再エネの普及にはいくつかの課題があります。ひとつは賦課金という国民負担があり、海外の事例をよく検証し、一種の進行管理をきちっとすると必要があります。同時に、FITだけでは再エネ普及は本格化しません。それは、北海道電力の接続容量が限界で接続できないという送電線の問題や規制改革の問題であり、それらを総合的に取り組むことが必要です。
北海道には大変なポテンシャルがあります。よく日本は資源の無い国といわれてきました。しかし、今や人も資源もある。それをどうやって開発していくのかという方向に発想を変えて、今後の発展を期待しています。





講演2 固定価格買取制度と国の政策について
講師:村上 敬亮 氏
資源エネルギー庁新エネルギー対策課長

【国内のエネルギー事情と再生可能エネルギー】
昨今、TPPで大きく取り上げられている日本の食料自給率が4割ですが、エネルギー自給率は4%、海外依存率96%という状況です。一見、平穏なように見えますが、夏や冬のピーク時も、この2年間、何とかこうとか乗り切ってきたというのが実態です。シンガポールみたいな特殊な国を除くと、イギリス・アメリカ・フランス・ドイツなどの先進国や中国、印度といった国々と比較しても、エネルギー自給率が10%を切る国はどこを探してもありません。現状は、かなり異常な事態です。
他方で、風や太陽光は、世界情勢に何が起ころうといつでも使えます。自然の恵みから枯れることなく得られる地産資源の国内産再生可能エネルギーをなぜ使えないのか、大型ダム等の水力を除くと、再生可能エネルギーがたった1.4%というのは、余りに情けない。少なくともコストが高く、現状では投資をしても回収の見通しが立たない点だけはどうしようもないということで、昨年、固定価格買取制度を導入することとなりました。


【FITの価格政策と再エネ普及への課題】
固定価格買取制度は、政府が指定した調達価格で調達期間中、電力会社がずっと再エネ電気を買い続けるという制度です。発電設備は必要な初期投資がほとんど冒頭に集中し、それが長きに渡って安定的に回収できるかどうかの見通しが立つから事業者は投資をするわけです。ですからFITは20年間42円という同じ価格で買取り続けます。そうしないと、投資が誘発されないからです。ただし、去年1年で太陽光発電のシステムコストは一割下がりました。それだけ初期の建設コストも下がっているわけです。そこで、今年参入する人の価格は38円で20年となっています。
他にも、買取制度には他に優先給電という仕組みをつけ、電力会社には再エネは自分の火力発電所を止めてでも優先的に流すといったルールが決められています。
このFITだけで再エネは普及するのかと言えば、まだ不十分です。私はよく車の両輪と申し上げていますが、FITはファイナンスを支える左の車輪。残る右の車輪は送電線と規制緩和です。例えば、地熱発電事業は、その賦存量の8割をしめる自然公園内の開発規制が緩和されなければ手が付けられません。実は米国では自然公園内は掘っていませんが、国土の狭い日本ではやむを得ない面があります。やはり自然の恵みから力をもらうには、それなりの地域の判断と覚悟がいるということを理解する必要があります。



【接続拒否;北海道のマクロとミクロの問題;周波数、下げ代、連系枠】
FIT導入から約1年を経過した現在、特に北海道に接続拒否がおきています。接続拒否が起こるケースは、電力会社のエリア全体の調整力不足に起因するマクロの問題と接続ポイント近辺の容量不足に起因するミクロの問題に大別されます。
マクロの問題は実はまだ北海道でしか発生していません。第一に、短期の周波数調整力不足です。太陽光や風力は日照や風況により分単位で出力が変動するのが特徴で、この変動を相殺・吸収することが可能な発電所、ロードフリクエンシコントロール(LFC)機能を備えた電源が必要です。代表的なものでは天然ガス火力と加変速の水力で、それらの調整能力以上に太陽光や風力が接続されると、エリア全体の需給や周波数が乱れ、最悪の場合は発電所が止まり停電を引き起こすことになります。このため、分単位の変動を相殺・吸収「しわ取り」が必要となるのですが、この「しわ取り」が可能な電源が少ないと、その量に再エネの導入量が縛られてしまいます。北海道ではこれが足りないのです。2MW以下の普通規模の太陽光発電は大丈夫です。これらは、規模もそこまで大きくなく、かつ全道に散らばって導入が進んでいますので、お互いの変動をうまく平滑化させることなどで限界を回避しています。ただし、2MW以上の超大型のものについては、しかもその3分の2が苫小牧近辺に集中しているという状況のため、自ら蓄電池をつけて変動がない状態にしてから繋いだり、全体の「しわ取り」を行う系統側の超大型蓄電池の設置などの対応策が採られることとなりました。後者については、国が約200億の対策費用の全額を助成することとしています。
もう一つの問題が下げ代不足というものです。昼間に太陽光発電による電力を大量に受け入れるために、火力の出力を一定量以下に下げると、夕方に電力需要のピークが来たときに、火力発電の出力が100%に戻せず、エリア全体の供給不足を引き起こすというものです。火力発電は、3割程度は暖機運転をしていないとすぐには100%出力には届かないという設備特性があります。この問題については、北海道地域に限定にした措置として、30日を超えて出力抑制が可能にするルール変更により対応することとしています。北海道電力は自由に出力抑制をかけられるのですから、今後は、下げ代不足を理由に接続を断ることが出来なくなり、事業を行うかどうかの判断の主導権は、電力会社側から発電事業者側に移ることになります。また同時に、北海道電力には出力抑制予測と実績値の公表を義務化し、発電事業者側の予測可能性を担保することとしました。今のところ、北海道電力では需給の厳しい状態が続いており、供給側に出力抑制をかけるような事態は発生していませんが、念のため、手当てすることとしました。

こうしたマクロの問題に対して、北海道以外でも生じているミクロの問題があります。ただし、この問題は接続距離さえ伸ばせば、必ず解決できます。あとはどこまで接続費用をかけるかという問題になってきます。ひとつが適正電圧超過とバンクの逆潮流の問題です。太陽光からの逆流電力が一定以上になると、配電に必要な電圧差が確保できなくなり、ご家庭に電力を供給できなくなってしまいます。元々、配電用変電所から電気の逆潮流はないという前提で配電系統は設計されているものですから仕方ないのですが、でも、ご家庭に電気が届けられなくなっては困ります。ただし、もし配電用変電所から系統側への逆潮流を認めることができれば、配電系統内の電位差の確保が容易になります。その結果、太陽光も、接続郷里の短い、近傍の配電系統内でよりたくさんつなげるようになります。実は、経済産業省では2か月のスピード審査を行い、そのために必要な規制緩和を、5月31日に実施しました。現在、電力会社では、この規制緩和措置を受けて、各配電用変電所に必要となる安全対策等の追加投資の内容と、その費用について、検討を急いでいるところです。
熱容量不足という問題もあります。変圧器は熱を持つため、一定以上の電流を流すと熱容量上パンクするという現象が起きます。一度パンクすると、そこから先の送電は全部アウトになってしまいます。北海道の場合、冬は寒いので通電できるが夏はだめという話が時々起きています。


【経産省の政策】
北海道にある膨大な再生可能エネルギー資源を全て活かそうとすれば、最終的には、北本連系線を増強する必要があります。ただし、そこまで北海道の再エネを活用するとなると、とても北海道内だけで消費するわけにはいかなくなります。ですから北海道電力に全額負担をお願いするわけにもいきません。さりとて、この問題は、発送電分離で解決する問題でもありません。再エネのための広域連携と費用負担の在り方は、分離された後の送電会社にとっても、新たな課題でしかありません。この問題について、どう議論を起こしていくかは、今後に向けた大きな課題です。
もし北本連絡線が強化されて、北海道にある大量の再エネポテンシャルが活かせるようになれば、北海道経済にとっては大きなチャンス。送電線整備、大型風力発電設備の整備といった形で巨額のインフラ投資が喚起されることとなります。そのためにも、北海道経済自身も、北本連絡線をはじめとする再エネ・インフラ問題について、これを成長のチャンスとらえて、更に積極的に議論をお願いできればと思います。
接続拒否問題については、確かに、事業者の立場からみれば、土地代も安く広大な土地を確保しやすい北海道で是非事業化したいという事情はもちろん理解できますが、固定価格買取制度の運用に責任を持つ自分の立場からすると、広く薄く全ての電気の利用者に負担をいただいて回している以上、他に、社会的コストをかけずに出来る場所があるのであれば、事業者の都合だけを考えずに、そちらを優先してほしいというのが偽らざる立場です。事業者の利得だけで買取制度が支援する発電設備の立地を選ぶことは出来ません。その点は、よくご理解いただければと思います。もちろん、こうした事情を踏まえつつも、それでもなお、北海道で引き続き、再エネを取り組むための環境整備については、政府としても、蓄電池をはじめ、しっかりと手を打っているつもりです。
北海道には、日本全体の再エネの比率を20%超とするためには不可欠なポテンシャルがあります。今の日本の再エネは水力の9%を含めて10%ですが、これを20%以上に高めるには、北海道の風力を数百万の単位で叩き出してもらわねばなりません。そして、日本全体で風力1000万kWのラインをクリアしないと、再エネを電源構成の20%以上にまずするという数字も、見えてこない状況です。ただし、この1000万kWという数字は、北本連系線をはじめとした送電線インフラの整備さえ進めば、実現可能な数字です。東京電力管内まで辿りつければ、風力のための調整電源は実質的に余っているし、送電線インフラさえと整えば、大型風力投資をしたいという事業者も既に大量に存在しているからです。
北海道は、どれほどの労力も惜しまないだけの再エネ・ポテンシャルとその可能性を持っています。今後はもっと、大型インフラ投資を誘致できる再エネ市場対策を、北海道経済自身のアジェンダとして更に大きく取り扱って頂いて、日本の為に、日本の再エネを最大限導入していくためにも、是非北海道の皆さんと、その具体化を真剣に考えていきたいと切に願う次第です。